屋根材としての銅

屋根材としての銅

銅の屋根

屋根に使用される銅板は、銅鉱石を電気精錬して製造した電気銅です。 これを鋳造したり圧延など加工したものが屋根材として製品化されています。

屋根に使用する銅板の種類

銅板には純度と含有成分により 無酸素銅(C1011・C1020) タフピッチ銅(C1100) りん脱酸銅(C1201・C1220) の3種類に分類されます。 いずれも純銅と呼ばれる素材ですが、屋根材にはりん脱酸銅が使用されます。

りん脱酸銅

りん脱酸銅は、純度が99.96%程度の純銅で、0.015~0.04%程度のりんを含有しています。 りんを含んでいるために溶接などの加工が容易で、強度、熱伝導性が高いことと導電性が低いことが特徴です。 リン脱酸銅は屋根材の他に湯沸かし器などにも使用されています。

様々な銅素材

近年では、銅板に様々な特性をメッキ加工で付与した素材が増えてきています。
荒川鈑金工業所では、目標とするデザイン意匠や構造、使用箇所などにより最適な素材をご提案させていただいております。

銅素材1
銅素材2
銅素材3
銅素材4

屋根や水切り、雨樋と銅素材

銅素材の熱膨張について

銅葺の屋根で暑い日などに屋根の一部が盛り上がってしまうことがあります。銅は熱膨張率が鉄に比べて1.4倍程度あります。屋根の表面温度は暑い日で80℃以上になるとも言われています。銅の熱膨張率を計算すると、概ね1mあたり1.5cm程度膨張する計算になります。そのため、銅板金を重ねて繋いでいく際の「はぜ」にもこの数値を加味した施工が求められます。また、板金屋根を屋根下地や垂木などに接合する際にも注意しないと、局部に熱膨張が集約してしまい、浮き上がったりずれたりする原因になってしまいます。

銅素材の熱伝導率について

銅は非常に熱を伝えやすい性質を持っています。熱伝導率は鉄に比べて約7倍と非常に鷹くなっています。そのため、下地などでしっかりと断熱を行うことが必要になります。半面、熱を蓄える性質が低く、冷えやすい性質を持つため、屋根の構造内で断熱がしっかりとされていれば鉄以上の断熱効果をもつこともかのうです持つことも可能です。

銅素材の柔らかさについて

金属の性質を表す単位にヤング率(縦弾性係数)というものがあります。曲げやねじりに対しての変形しにくさを数値化したもので、変形しにくいものほど数値が高くなります。銅は鉄に比べ半分程度しか硬さがありません。折り曲げたりする板金加工には向いていますが、強風で接合部分の 加工が伸びてしまったり曲がってしまう可能性もあり、「はぜ」には強度も必要になります。

化学物質と銅の屋根について

一般的に大気中には窒素や二酸化炭素などの他、工業化が進んだ近年では硫化水素や二酸化硫黄などの化学物質も大気中に含まれています。銅はその性質上、硫黄ガスや硫化水素に弱いとされているため、火山地帯では温泉施設などでは腐食(錆び)などに注意が必要です。それでも非常に高い耐腐食性を持っているため、雨や排水管などに利用した場合には鉄に比べ腐食の体制が圧倒的に高いことが特徴です特徴です。塩分を含んだ海岸沿いの地域での使用にも十分耐えることができます。

科学的な銅の性質と建物について

種類の違う金属が雨水などを介して接触した場合にイオンの働きにより腐蝕(電気化学的腐食)が発生します。銅はその性質上、イオンが溶け出しにくい金属ですが、建物で釘や金物など最も使用されている鉄との相性が悪いことが知られています。そのため銅板金を垂木など屋根材に接合するときには黄銅やステンレスを使用します。雨樋の場合も同様で近年増えているガルバリウム鋼板製の屋根の場合、銅製の雨樋を付けることはおすすめできません。雨の流れる方向に影響されますので銅板金屋根にガルバリウム鋼板製の樋を付けることは可能です。