銅鈑金の技術

銅板屋根の種類 【横ぶき】

屋根の垂直面に対して横方向に屋根材を施工していくものが横葺です。金属屋根との施工方法としては一般的で社寺の場合は主流になります。比較的細かい部材を加工していくため手間がかかります。また雨水の滞留が縦葺に比べ多いので屋根勾配が緩い屋根には注意が必要です。銅の他ガルバリウム鋼板なども使用されます。

一文字ぶき

一文字ぶきは昔から最も一般的な銅板葺の屋根構法です。 一般的には365mm×1,212mmの板を切り、上下左右に15mm程度の組合せ部分を作って継ぎ合わせます。いわゆるはぜぶきと呼ばれる工法です。非常に耐風性があり耐水性も優れていますが、接合部の重なりが大きく、熱膨張による負荷が大きいのでが、当社ではエキスパンション・ジョイント工法と呼ばれる接合部を挟むことにより、熱膨張の伸縮によるあばれ現象を防いでいます。また、加工性が非常に高く、どんな形状の屋根や壁にも沿った形でせこうすることがかのうです施工することが可能で、昔から屋根や壁に利用されています。

一文字ぶき
一文字葺の形状

ひしぶき

ひしぶきは正方形に切断したふき板にはぜを作り、流れを対角線方向にしてふきあげる工法で外見がひしがたになります。一般的には227.5mm~365mm角に15mm程度のはぜを作りふき板としています。いちもんじぶきほどではありませんが耐風性に優れている事と、はぜが斜めになるので水切り性能が高いことが特徴です。しっかりと施工されたひしぶきの屋根や外壁は迫力があり、龍のうろこのような独特の美しさを備えます。

ひしぶき

腰ぶき

瓦ぶき屋根の軒先を銅板ぶきにしたものを腰ぶきといいます。妻側の軒も銅板ぶきにすると額縁ぶきややっこぶきと呼ばれます。古い家屋では比較的よく見られます。 屋根に変化ができるのでデザイン性が良い点 屋根瓦の枚数が減ることで屋根重量を約1/10程度まで軽くできる点 瓦の割り付けがしやすくなる点 主要部分は断熱性の良い瓦を使用できる点 がメリットです。 半面、釉薬瓦を使用する際には銅板金との接合部を工夫しないと銅板金を痛めることになる可能性が高く注意が必要です。

こしぶき

段ぶき

いちもんじぶきの場合、屋根はフラットな形状になってしまいます。屋根に起伏を付ける方法の一つに、野地板に段差を付けその上に銅板金を施していく段ぶきがあります。大工手間が増え、ルーフィングなども加工や材料が増えるので施工費用は高くなりますが、仕上がりは非常に美しくなります。

段ぶき

銅板屋根の種類 【縦ぶき】

縦葺きの屋根は銅板金特有の様々なメリットがあり, 一般住宅だけではなく公共施設などでも採用されることが多い施工法です。 一番の特徴は、基本的に一枚の銅板で屋根の頂上から先端まで葺くことです。雨の流れる方向につなぎ目が発生しないようにすることで雨漏りのリスクを抑えることができます。 近年増えている屋根勾配が緩いフラットな形状の屋根の場合には雨に強い縦葺きが有効です。 縦葺きは1953年(昭和28年)に広島県福山市盈進学校の校舎と旭小学校体育館の屋根を葺く際に初めて用いられたとされており、昭和から平成にかけて多く施工されました。

瓦棒ぶき

瓦棒葺きは、縦葺の中では古い施工方法で昭和時代に多く施工されました。現在でも納屋の屋根などで目にすることは多いです。比較的単純な構造で、それぞれの屋根材がはぜで大きく分かれているため熱膨張などによる歪みが少ないとされています。また、ハゼ部分を再加工すれば面材自体を大きく取り外すことができるので、万が一破損してしまったり腐食が進んだ場合でも交換が可能でメンテナンス性が良いことも特徴です。

瓦棒ぶき

心木あり瓦棒ぶき

銅板金の屋根面材を心木と呼ばれる芯に釘打ちで固定する工法で、工期が短く施工も簡単な板金屋根です。 半面、芯に固定した釘の部分から雨水が侵食し垂木や屋根材が腐食するケースが多く、その部分が弱くなることで台風などの強風で屋根がめくれ上がることも有り近年ではほぼ施工されていません。

瓦棒ぶき2

心木なし瓦棒ぶき

心木がある瓦棒ぶきのデメリットである雨に弱いという欠点を無くしたものが心木なし瓦棒ぶきです。 屋根面材を吊子と呼ばれる金属材で屋根下地に固定しキャップの部分で屋根面材同士をはぜで固定します。外面に釘などが出ないため雨に強くなります。半面、心木の部分(はぜ)は空洞になるので、大雪などで圧力がかかってしまうとゆがんだりする恐れもあります。はぜが歪んだりへこんでしまうと雨水が滞留し錆の原因となります。

心木なし瓦棒ぶき

スタンディングシームぶき

スタンディングシームは、心木を無くした工法で防水性に優れた立平葺きです。立平葺には他にもいろいろな種類があり、デザイン性や用途が異なります。スタンディングシームの場合には、立上りの部分の表面積が少ないため耐久力が上がり、雨漏りへの備えも非常に強くなります。雨の対流が少ないことは大変大きなメリットになりますので屋根勾配の少ない家屋や施設の屋根の場合、最も選択しやすい工法になります。半面、立平葺き全般に言える事ですが、補修などで一枚だけ交換したい場合でもかなり大掛かりな作業になるケースもあります。

スタンディングシーム